こんにちは。MusicAbility、運営者の佐倉です。
これからギターを始めたいと思ったとき、最初にぶつかる大きな壁が「アコギとエレキ、結局どっちが良いの?」という選択ではないでしょうか。
「アコギの温かい音が好きだけど、指が痛いって聞くし…」「エレキはカッコいいけど、機材とか難しそう…」そんな風に悩んで、なかなか最初の一歩が踏み出せない方は本当に多いんです。
実はこの最初の選択こそが、その後のギター人生が「一生の趣味」になるか、「押し入れの肥やし」になるかを左右する重要な分岐点になります。
それぞれの楽器には構造上の決定的な違いや、住環境における向き不向きが明確にあるからです。
この記事では、私が実際に経験して学んだ知識をもとに、スペック表だけでは分からない「リアルな弾き心地」や「生活への影響」、そして挫折せずに楽しむための選び方を徹底的に深掘りしてお話しします。
- アコギとエレキの構造的なメカニズムと、決定的な音量差について
- 弦の太さや張力がもたらす「挫折率」と「難易度」の関係
- 初期費用から維持費まで、リアルにかかるトータルコストの比較
- あなたの性格や住環境に合わせた、後悔しないギターの選び方
アコギとエレキの決定的な違い
一見すると同じ「ギター」という楽器に見えますが、実は音が出る仕組みも、弾くときの身体への負担も、全くの別物と言っていいほど違います。ここでは、これから始める方が特に気になる「弾きやすさ」や「音の大きさ」といった現実的なポイントに絞って、両者の違いを深掘りしていきましょう。
アコギとエレキはどっちが良いか
結論から申し上げますと、「やりたい音楽スタイル」と「練習環境」によって正解は変わりますが、「物理的な弾きやすさ」と「挫折しにくさ」という点だけで見れば、圧倒的にエレキギターに軍配が上がります。
かつては「最初はアコギで指を鍛えてからエレキに移行すべき」という、いわば精神論的な指導が一般的でした。
しかし、現代のギター指導の現場や私の経験からすると、この考え方は少しハードルが高すぎると感じています。なぜなら、アコギは構造上どうしても弦が太くて硬いため、指先が痛くなりやすく、特に初心者の最大の難関である「Fコード」を押さえるのにかなりのコツが必要だからです。
一方でエレキは弦が柔らかく、ネック(持ち手)も細めに設計されているため、初心者の方や手の小さい女性、お子様でも比較的楽に弦を押さえることができます。「まずは曲を弾ける楽しさを知る」「指を動かすことに慣れる」というスタートダッシュを切りやすいのは、間違いなくエレキの方ですね。
まずはエレキで指先の皮を少し硬くしてから、アコギに挑戦するというルートも、非常に理にかなった選択肢だと思っています。
ここがポイント
「弾き語りがしたい!」という強い意志があるなら迷わずアコギですが、もし「なんとなくギターが弾きたい」と迷っているなら、ハードルの低いエレキから入るのも賢い戦略です。
構造と音量における違い
この2つは「入力されたエネルギー(弦の振動)をどうやって大きくするか」という物理的な仕組みが根本的に違います。これが、自宅での練習環境や演奏スタイルに大きく関わってくるんです。
アコギは、あの空洞のボディ自体が巨大な「共鳴箱(チェンバー)」になっています。
弦が振動すると、そのエネルギーがブリッジを介してトップ板(表板)を振動させ、ボディ内部の空気を圧縮・共鳴させることで、電源なしでも大きな音を放射します。この「空気を震わせる」というアナログな仕組みこそがアコギの魅力であり、公園でもキャンプ場でも、場所を選ばずに演奏できる理由です。
しかし、その反面「ボリュームを下げることができない」というデメリットも抱えています。
対してエレキは、マイクの役割を果たす「ピックアップ(磁気センサー)」で弦の振動を拾い、それを電気信号に変えてケーブルで送り、アンプ(スピーカー)で増幅して音を出します。ボディは「ソリッド」と呼ばれる木の塊で空洞がないため、生音(アンプに繋がない状態)は「ペンペン」という小さな金属音しか鳴りません。しかし、この「生音が小さい」という特性こそが、日本の住宅事情においては最大のメリットになります。
| 項目 | アコースティックギター | エレキギター |
|---|---|---|
| 発音原理 | ボディの空洞共鳴による空気振動(アナログ) | 電磁誘導による電気信号変換(デジタル的) |
| ボディ厚 | 約100mm〜120mm(分厚く抱えにくい) | 約40mm〜50mm(薄く体に密着する) |
| 重量 | 軽量(約1.5kg〜2.5kg) | 重量級(約3.0kg〜4.5kg) |
| 生音量 | 80dB〜90dB(ピアノや怒鳴り声並み) | 60dB〜70dB(テレビや会話並み) |
ボディの厚みと抱え心地について
意外と見落としがちなのが「ボディの厚み」です。アコギは音を響かせるために厚みが必要で、小柄な方だと右腕が上がってしまい、肩が凝りやすい傾向があります。対してエレキは薄く体にフィットする形状(コンター加工など)が多いため、長時間抱えていても疲れにくいという特徴があります。
弦の硬さと難易度の関係
初心者がギターを辞めてしまう理由のNo.1は、間違いなく「指が痛くて弾けない」ことです。ここで重要になるのが、弦の太さ(ゲージ)と張力(テンション)の科学です。
アコースティックギターは生音を大きく響かせるため、張力の高いブロンズ弦が使われます。
一般的なライトゲージでも、6本の弦が生む総張力は約70〜75kgに達し、これは大人の男性がぶら下がれるほどの力です。そのため、初心者の柔らかい指先で弦を押さえると強い痛みを感じやすく、最初は皮がむけたり水ぶくれができることも珍しくありません。これは多くのギター初心者が通る過程です。
一方のエレキは、マイクが振動を拾えれば良いため、細くて柔らかい「ニッケル弦」を使用します。
総張力は40kg前後と、アコギの約半分程度です。さらに、エレキは構造上「弦高(フレットと弦の隙間)」を極限まで低く設定できるため、「軽く触れるだけで音が鳴る」という感覚に近いです。この物理的な「楽さ」は、Fコードなどのバレーコードに挑戦する際、成功率に雲泥の差を生みます。
スケール(弦長)の違いも影響します
一般的に、ムスタングやレスポールといったエレキギターは「ミディアムスケール」や「ショートスケール」を採用しており、弦が短いため張力がさらに弱くなります。手の小さい方には特におすすめです。
アパートでうるさいのはどっち
日本の住宅事情、特に木造アパートやマンションにお住まいの方にとって、騒音問題はご近所トラブルに直結する死活問題です。客観的な数値(デシベル:dB)で比較してみましょう。
環境省のデータなどを参考にすると、アコギを全力でストロークした時の音量は80dB〜90dBに達します。これは「ピアノの音」「犬の鳴き声」「地下鉄の車内」に匹敵する大きさです。一般的な住宅の壁では防ぎきれず、隣の部屋には「うるさい」と感じるレベル(50dB以上)で音が漏れてしまいます。夜間に弾くことは、防音室がない限り実質不可能です。
(出典:環境省『生活騒音の現状と対策』)
対してエレキの生音は60dB〜70dB程度。これは「普通の会話」「静かな乗用車内」「テレビの音」と同じくらいです。ヘッドホンを繋げば、自分にはアンプを通した迫力あるサウンドが聴こえますが、外に漏れるのは「ペチペチ」という小さな弦の振動音だけです。テレビを見ている家族の横で練習しても、そこまで迷惑がられないレベルです。
振動(固体伝搬音)には注意!
音そのものは小さくても、エレキを立って弾く時のリズムを取る足音や、アンプを床に直置きした時の低音振動は、「ドンドン」という不快な振動として階下に響きやすいです。練習の際は、厚手のカーペットや防音マットを敷くなどの配慮を忘れないようにしましょう。
初心者が挫折する原因と対策
ある有名な楽器メーカーの調査によると、ギターを始めた人の約90%が1年以内に辞めてしまうという衝撃的なデータがあります。その原因の多くは、「Fコードが弾けなくて心が折れる(技術的挫折)」と「練習できる場所や時間がない(環境的挫折)」の2点に集約されます。
アコギを選んだ場合、構造上どうしても「Fコードの壁」が高くなります。ナット側にある1フレットは弦の反発力が最も強い場所であり、そこを人差し指一本で6本の弦全てを押さえる(セーハする)には、テコの原理的に不利だからです。ここで無理をして手首を痛めたり、「自分には才能がない」と諦めてしまう方が後を絶ちません。
もしアコギでFコードに苦戦しているなら、「弦を細いもの(エクストラライトゲージやコンパウンド弦)に張り替える」のが即効性のある対策です。これだけで張力が下がり、驚くほど弾きやすくなります。
また、騒音が気になって練習できない場合は、YAMAHAの「サイレントギター」のような、骨組みだけのギターを選ぶのも一つの解です。アコギの演奏感を保ちつつ、音量はエレキ並みに抑えられるため、夜型生活の社会人にとっては最強の練習パートナーになります。
アコギとエレキの費用と練習方法
「続けられるかわからないから、最初はなるべく安く済ませたい」というのが本音ですよね。しかし、安物買いの銭失いにならないためには、最低限の品質ラインを知っておく必要があります。ここでは、最初に揃えるべき機材のトータルコストや、それぞれの特徴を活かした練習の進め方について解説します。
初期費用と予算の目安を比較
ギターを始めるには、本体以外にもいくつか必要なものがあります。それぞれの「始められるセット」のざっくりとした予算感を見てみましょう。
【アコースティックギターの場合】
アコギは本体さえあれば音が鳴るため、初期投資は比較的シンプルです。
- ギター本体:30,000円〜50,000円(YAMAHA FS/FGシリーズなど)
- 必須アクセサリ:約5,000円(チューナー、ピック、カポタスト、スタンド、クロス)
- 合計目安:35,000円〜55,000円
1万円台の激安通販ギターもありますが、ネックの状態が悪かったり、チューニングがすぐに狂ったりと、練習の妨げになるトラブルが多いため、できれば3万円以上のメーカー品を推奨します。
【エレキギターの場合】
エレキは本体だけでは本来の楽しさが味わえないため、周辺機器のコストが加算されます。
- ギター本体:30,000円〜50,000円(YAMAHA Pacifica、Bacchusなど)
- アンプ:5,000円〜10,000円(自宅練習用の小型アンプ)
- 必須アクセサリ:約8,000円(シールドケーブル、チューナー、ピック、ストラップ、スタンド)
- 合計目安:43,000円〜68,000円
エレキの方が、アンプやシールドが必要な分、初期費用は1〜2万円ほど高くなる傾向にあります。
「アンプ」は絶対に必要?
生音で練習することも可能ですが、変な力み癖がついたり、ミュート(余計な音を消す技術)が身につかない原因になります。最近はヘッドホンアンプなど安価で便利なものもあるので、必ず「電気を通した音」で練習しましょう。
初心者におすすめの練習曲
モチベーションを維持するには「知っている曲を弾く」「曲に合わせて弾いている気分を味わう」のが一番です。それぞれの楽器の特性に合った曲からチャレンジしてみましょう。
アコギなら、スピッツの「チェリー」や、あいみょんの「マリーゴールド」が鉄板中の鉄板です。これらは「C→G→Am→Em」といった王道のコード進行(カノン進行など)を含んでおり、コードストローク(ジャカジャカとかき鳴らす奏法)の楽しさを存分に味わえます。特にマリーゴールドは、カポタストを2フレットに付けることで、難しいコードを簡単なフォームに置き換えて弾けるので、最初の1曲として非常に優秀です。
エレキなら、MONGOL800の「小さな恋のうた」や、DOESの「曇天」などがおすすめです。これらはロックの基本である「パワーコード」という、指2本(人差し指と薬指など)だけで押さえられる簡単な形で弾けるパートが多く、歪んだアンプの音と合わせれば、「あ、自分いまギター弾いてる!」というロックな高揚感を初日から味わえます。まずは細かい技術よりも、この「音を出す快感」を知ることが継続の秘訣です。
弾き語りに適した選び方
「歌うこと」がメインで、その伴奏としてギターを弾きたいなら、やはりアコギが圧倒的に有利です。アコギ特有のボディが共鳴するきらびやかで温かい音色は、人間の声の周波数帯域と非常によく馴染みます。また、「駅前で歌いたい」「キャンプファイヤーで歌いたい」といったシーンでは、電源不要のアコギの独壇場です。
ただ、「エレキで弾き語りはできないの?」と聞かれれば、答えはNOです。むしろ最近は、エレキギター特有の「クリーントーン(歪ませない澄んだ音)」に、リバーブ(残響音)やコーラスといったエフェクトを薄くかけて、おしゃれで都会的な雰囲気の弾き語りをするアーティストが増えています。King Gnuの常田大希さんや、星野源さんのように、エレキを抱えて歌うスタイルも非常にカッコいいですよね。
重要なのは「自分が憧れているアーティストが何を持っているか」です。憧れの人と同じ形のギターを持つこと以上のモチベーションはありません。自分の好きなスタイルがどちらに近いか、改めて動画などで確認してみてください。
弦交換とメンテナンスの注意点
ギターを買った後に発生する「ランニングコスト」と「管理の手間」についても、事前に知っておくことで後悔を防げます。
まず共通して言えるのは、ギターの弦は消耗品であるということです。弾いているうちに手汗や空気中の水分で錆びて黒くなり、音も鈍くなります。錆びた弦は指を傷つけ、フレット(金属の棒)を摩耗させる原因にもなるので、1ヶ月〜3ヶ月に一度は交換が必要です。弦の値段は1セット600円〜1,500円くらい。最初は楽器屋さんに持ち込んで交換してもらう(工賃+1,000円程度)のが安心ですが、慣れれば自分で15分ほどでできるようになります。
構造ごとの注意点としては、アコギは薄い板を張り合わせているため、湿度の変化に極端に弱いです。特に日本の冬の乾燥は天敵で、湿度40%を切るとトップ板が割れたり、ブリッジが剥がれたりするリスクが高まります。ハードケースの中に湿度調整剤を入れるなどのケアが必須です。
一方のエレキは木部が分厚いため、アコギほど乾燥には弱くありません。その代わり、ボリュームノブやジャック(ケーブルを挿す穴)の内部が酸化して接触不良を起こし、「ガリガリ」というノイズが出ることがあります。これは接点復活剤というスプレーで定期的に掃除してあげる必要があります。
アコギとエレキの選び方まとめ
ここまで読んでいただき、それぞれのメリット・デメリットが見えてきたかと思います。最後に、これまでの情報を整理して、あなたがどちらを選ぶべきかの判断基準をまとめておきます。
アコギを選ぶべき人
- 「ゆず」や「あいみょん」のような弾き語りスタイルに憧れている
- 電源のない場所(屋外、自室の隅など)でも手軽に弾きたい
- 機械の設定や配線が面倒だと感じる
- 昼間に音を出せる環境がある、またはカラオケボックス等で練習する覚悟がある
エレキを選ぶべき人
- ロック、ポップス、メタルなど、バンドサウンドが好き
- 指の力に自信がない、手が小さい、爪を伸ばしている
- アパートやマンション暮らしで、夜間に練習することが多い
- アンプやエフェクターを使って、多彩な音作りを楽しみたい
どちらを選んでも、ギターは一生楽しめる奥深い趣味になります。「アコギから始めたけどエレキに転向した」「エレキを買ったけどアコギも買い足した」なんてことは日常茶飯事です。まずは「直感でカッコいいと思った方」を選んでください。それが、辛い練習を乗り越えて毎日ケースを開けるための、一番のエネルギーになりますから。
ちなみに私はアコギを主に使っていて、ほぼ毎週カラオケやスタジオで練習をしています。
ギターミュート等で対策して自宅で弾くこともできるので、本当はアコギがいいのに音が出せないからといって即諦めることはないですよ。
この記事が、あなたの音楽生活の第一歩を後押しできれば嬉しいです。正確な情報は各メーカーの公式サイトなども確認しつつ、ぜひ勇気を出して楽器屋さんに足を運び、実物を抱えてみてくださいね。

